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2012年に放映された映画『スケッチ・オブ・ミャーク』。古くから地元民の間だけで歌いつながれてきた、宮古島の古謡や神歌に追ったドキュメンタリーだ。
まだ見たことのない人は、宮古島を訪れる前に、なによりHotel Locusのゲストの方であるならばぜひ観てほしい。
無国籍楽団・ダブルフェイマスのトランペッターである坂口さんは、この映画を観て、声だけでつむがれてきた宮古の伝統音楽の存在を知る。本編の中では、観光客には一切見せてこなかった神秘的な歌も登場する。この映画をみて以来、宮古島といえば、「声」や「歌」が連想されるようになったのだという。
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クイチャー(声合)のリズムと泡盛
旅のテーマは、宮古島の音楽。
案内役は、初代宮古島大使であり、ミュージシャンの江川ゲンタさん。
さらに、ゲンタさんが主宰する『宮古島ミュージックコンベンション』は、ビーチからライブハウスまで宮古島全体で、昼夜開催される音楽フェスティバル。2017年で13回目。地元のミュージシャンから国内で活躍するミュージシャン、DJが集う、数千人規模のお祭りをつくる人でもある。
まず、そんなゲンタさんに連れて行ってもらったのは、『島唄居酒屋 喜山』。
宮古島のメインストリート・西里大通り沿いにあるお店で、宮古民謡を楽しみながら島の食材を活かした地元の料理や泡盛が味わえるお店。
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島唄居酒屋 喜山
沖縄県宮古島市平良西里244
営業時間/11:30 - 14:00/ 17:00 - 24:00
電話/0980-72-6234 定休/火曜日
沖縄本島のカチャーシーと呼ばれる独特の歌と踊りとはまた違った、声合(クイチャー)のリズム。本来は楽器を使わず声だけで輪になって踊るもので、ここでは三線に合わせて、愉快に飲み、食べ、踊る。
「台湾の原住民の踊りにも似た宮古独特のダンスはこれも言葉のリズムから来ているのでは?」と坂口さん。
島には数多くの島唄居酒屋がある。『南の島の食べものと島酒 うさぎや』や『島唄ライブ居酒屋 和おん』もオススメだとゲンタさんが教えてくれた。
宮古島のナイトライフ
「歌舞音曲の民俗的伝統があるからか、この規模の街にしてはマニアックな音楽を扱うライブハウスやバーが多い。民謡酒場からジャズ・バー、アンダーグラウンドな音楽を得意とするDJバーや、なぜかロカビリーまで幅広く音楽を楽しむことができた」
そんな坂口さんのお目に止まった名店が、『BAR PULSE』。クラシックなスピーカーで組まれた独自のサウンドシステム、ボトルに囲まれた中2階のDJブース。ときに国内外の有名DJがお忍びでくることもあるのだとか。オーナーのP-Booさんは、宮古島の音楽レーベル、脈(Myhaku) Recordsも主宰する。
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BAR PULSE
沖縄県宮古島市平良字西里299-7
営業時間/20:00 - 4:00
電話/0980-73-6441
不定休・旧暦の1日・15日休業・新月と満月はお休み
続けて入った『ROAD HOUSE 雅歌小屋』。プロ・アマ問わず、幅広い年齢層のミュージシャンがレギュラー出演し、水曜日の夜は飛び入り参加自由のアコースティックやセッションが行われている。
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ROAD HOUSE 雅歌小屋
宮古島市平良下里58 B1
営業時間/21:00 - 5:00
電話/0980-79-0647
不定休
ゲンタさんと待ち合わせ前に入ったワインバー『酒と旅 ガリンペイロ』。宮古島カルチャーを伝える島のフリーペーパー[手紙 Te Gakeru Kami]に連載をもつ酔いどれライターがオーナーのお店だ。
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酒と旅 ガリンペイロ
沖縄県宮古島市平良西里567
営業時間/16:00 - 1:00
電話/0980-72-4532
定休日/日曜日
波の音、風の音を聞いて日中を過ごす
宮古島の音楽を知りたいなら昼間は波の音を聞きなさい、とゲンタさんは言う。
この島には、山も川もない。平地と少しの丘を除いては、大半が海。砂浜の豊かさには驚かされる。
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ゲンタさんの言いつけを守り、昼間はレンタカーで島中の砂浜を巡り、景色を眺めながら独特のサウンドスケープに耳をかたむけた。
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浜と浜をつなぐドライブ中には、スマフツ(宮古弁)に触れる。宮古島のスター歌手、下地イサム。
「ジャズやボサノヴァの影響を受けたグローバルでモダンな楽曲のアレンジと相反する超ローカルなスマフツで歌われる歌唱のミスマッチが絶妙。しばらく聴いていると癖になってなんども聴いてしまうけど、何度聴いても歌詞の意味はまったくわからない(笑)」
「す゜」や「き゜」「さ゜」といった標準語にはない、不思議な発音を持つスマフツ。この言葉のリズムが独特のうねりを生み出している。
旅のドライブ中、とくに車内で流れていた宮古島の音楽選。
「スケッチ・オブ・ミャーク」オリジナルサウンドトラック
「スマフツ~The Golden Language」下地イサム
「Vude -Eee 」Black Wax
「宮古島」八木のぶお-Beach Side
「Raggae Spoonful」ハカセサン
その土地に根付く、そこにある音。
誰かが歌った、または奏でられた音楽。サウンドスケープであったり、もしかすると居酒屋の隣の席から聞こえる方言であったり。ミュージシャンという職業柄か、坂口さんが宮古島で気に留めていたのは、様々な音だった。
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その「音」にフォーカスすることで、また新しい島の魅力が垣間見ることができた旅となった。